年号は平成から令和に変わりました。時代は変わっても原田内科医院の理念や方針、医療に対する考え方に変わりはありません。人の世は時代とともに移ろい内面的な変化とともに成長を望むものですが、おそらく本質的なところでは昔も今も変わっていないと思います。万葉集が理解できるのもローマ時代の書物に共感できるのも人の感性や内面的心情が変わっていないことの証だと信じたいところです。一方で人々の短い一生のなかでは年齢や病気あるいは特別な体験によって個人としての考え方や心情が微妙に変化することもまた事実であり、太古の昔から人間が繰り返してきたことです。しかし、年号が変わったからといって新しい生き方が舞い込んでくることはありません。これまでどおり地道に自分の価値観を磨くのみです。
これからも医療を通じて皆様のお役に立ちたいと願っています。新しい時代も様々な変化が予想され、それに対する備えもある程度必要でしょう。しかし私たちは時代の風潮や流行によって右往左往することなく正しいと信じた医療に取り組んでいきたいと考えています。いつの時代も世の中の大きなうねりに流されまいとする強い意志を持つ人々の絶え間ない努力があり、それらの総和によって揺らぐことのない一定の価値観が守られてきたのだと思います。医療を通じて原田内科医院も微力ながら努力を重ねていきたいと考えます。令和の時代がより良い時代になりますように心より祈念いたします。
これからもできるだけ多くの方に信頼される診療所でありたいと思います。原田内科の先生は「いつも病気の怖い話をして、二言目にはやっぱり内視鏡検査だね」と小言をいわれるような医師でありたいと思っています。癌は誰にでも、いつのまにか、知らないうちに進行している、そういい続けたいと考えています。その啓蒙こそが癌の早期発見・早期治療につながり、地域社会の活性化につながる要因のひとつと信じてやっています。皆さんも他人事とは思わずに当院を尋ねてきてほしいと思います。医師となった昭和の時代から内視鏡検査に限らず、あらゆる医療技術を修得するために日々研鑽を重ねてきました。大学では診断精度を上げるために、数多くの医師と共同し難しい検査や治療を来る日も来る日も行ってきました。多くの助かった患者さんの陰で助けることが出来なかった患者さんが今でも心に残っています。永遠の別れの中でやり場のない喪失感や無力感を感じたことも少なからずありました。このような医師として必然的な経験を通して自分が最も重要と感じたこと、それが「早期発見・早期治療」でした。そのために医療従事者に何ができるか?俯瞰的に見れば微力と思いますが、内視鏡検査の技術を極限まで高めたうえでの「通常内視鏡検査」もそのひとつと考えています。安全に検査が出来るだけでなく診断が迅速になり、診断精度も高まります、そして何より診断の先にある治療や予後が見通せます。そしてもうひとつの私の大切な役割は、検査の重要性を一人でも多くの人々に伝えることでした。沢山の患者さんを診させていただいて学んだこと、すなわち癌を早期発見するためには正しい検査が必要なこと、何のために、誰のために、どのような検査をするのかを患者さん自身に十分理解してもらうことでした。決して楽な検査が最良の検査ではないことも。一方で超音波検査は、癌や生活習慣病を診るうえで、内視鏡検査と並んで最も優先すべき大事な検査です。超音波検査は多くの疾患を診断することが可能で、否定できなかった疾患についても次に何をすればよいかを教えてくれます。当院では副院長が糖尿病や甲状腺疾患を専門的に担当しており頸部甲状腺の超音波検査の依頼も増えてきました。生活習慣病の治療と並行して癌の有無を確認することが安定した確かな経過観察につながります。当院は胃癌、大腸癌、肝臓癌の精密機関でもありますが、消化器科以外でもあらゆる領域の専門機関と繋がり、日々連携して診断と治療を行っています。専門領域はもちろんのことですが、気になることがあったら何でも気軽に相談していただきたいと思います。
さて、医療とは何か?この問いに対する答えは、なかなか難しいと思います。なぜなら本来、人間が幸せになるために、あるいは不幸にならないために、というのが一般的な医療の存在価値と考えがちです。しかし実際にはどうでしょう?病院に行って健康診断を受けて癌を宣告されれば誰しも心穏やかではいられません。多くの方は生活体験や書物などから情報を得ることで一定の死生観を持ち、病気や老い、いつかは訪れる死についても理屈ではある程度理解し、それに対して覚悟もしています。しかし病気が見つかれば平常心を保つことは難しく心は落ち込んでしまいます。進行癌であれば診断は出来ても助かるとは限りませんから、なおさらです。そのように考えると医療が単純に幸せになるためものでないこともなんとなく理解できます。では一体何のためでしょうか。ぜひ一緒に考えていただきたいと思っています。一緒に考えることで少しずつお互いの理解が進み、一方通行でない医療、本当の意味で「医療活動を通じた社会貢献」ができるのではないかと考えます。私たちは患者・医師の信頼関係、医学の知識、医療技術を重視し、より良い医療を目指して努力しています。それでも、すべての患者さんを幸せにすることは出来ません。しかし、かといって私たちの医療に対する考えは開業当時と何も変わっていません。志はそのまま、現在進行形です。
原田内科医院では職員一人ひとりが医療の果たす役割や社会とのつながりを常に意識して仕事に向き合っています。医療を通じて多くを学び、その活動を社会福祉に還元するため「医学」という広くて深い分野をできる限り理解しようと日々努めています。その間にも多くの患者さんが医院を訪れます。病気が見つかり治療を余儀なくされる方、病気が治って元気になる方、病状や経過が思わしくない方、時には不幸にしてお亡くなりになる方もいらっしゃいます。私たち職員も人間ですから、時には自分の生活につまずき、悩み、自己解決や妥協を繰り返しながら暮らしています。その中で患者さんの声に耳を傾け少しでも役に立てればと頑張っています。自分の生き方を真摯に考えることが出来なければ他人の心配や不安に寄り添うことはできません。当院ではスタッフ採用の際に最も気をつけていることがあります。それは、相手の心の痛みや不安を自分のことのように感じて心から寄り添うことが出来るか、つまりは人間的な優しい気持ちをもっているかどうか、という極めてシンプルな点です。それ以外に判断基準はないといっても過言ではありません。もちろん、その前に十分医療に貢献できるだけの勉強をした方の中から選ぶわけですが、それだけ優秀で思いやりのあるスタッフが揃っていると自負しています、安心して受診してください。きっと皆様のお役に立てると信じています。
開院当初、電話番号を決める際にいくつかの選択肢から、あるこだわりをもって決めた番号が今の原田内科医院の電話番号です。22の1151、ごく普通の電話番号ですが下3桁151にある意味が込められていました。ここまで書けばおわかりと思いますが、「一期一会」です。人が一生のうちに出会える人間の数はごくわずかです。だからこそ、偶然に偶然が重なって久留米市国分町で開業をさせていただくことが決まったときに思いました。ここで出会った人たちとの邂逅を大切にしようと。
原田内科医院にはいわゆる広告のための看板がありません。医院の前に診療科と診療時間を示したモニュメント的な看板が一つだけ設置してありますが市内どこを探してもありません。ひとつには街の景観を大切にしたいというのもあります。看板の広告が誇大になっても落ち着きませんし遠慮して地味にしたら伝わるものが伝わらないと思います。いろいろ考えて看板は作りませんでした。そのこだわりの分、何かの縁で訪ねてきてくれる方々には誠意をもって話をしたいと思っています。単に医師・患者間の信頼関係だけではない人間同士のつながりが地域や、そして少し大げさに言うと、世界につながる「一期一会」として良い方向へ社会環境を変えていくのではないかと感じています。もっとも時間の許す限りということですが、「忙しいときは次の機会に」というようなお互い思いやりのある診療所であり社交の場でもありたいと思っています。一方通行ではない、互いに寄り添い、共に考えていく医療が理想と考えています。
当院では開院当初から「早期発見・早期治療」に力を入れてきました。実際、早期発見できた方が多数おられますが、一方で残念ながら早期発見できずに根治的治療が出来なかった方もおられます。間に合わなかった方はいろいろな事情で適切な検査を受けていなかった方がほとんどです。改めて申し上げますが、当院に限らず、定期的な正しい検査を受けていただきたいと思います。特に腹部超音波検査と消化管内視鏡検査は重要です。生活習慣病が問題になる年齢は癌年齢と重なります。